令和6年10月26日公開
この度、厚労省の資料に肝炎ウイルスの存在を証明できる試験方法が存在しないこと、それ故に存在することを前提にすることが書かれた文書が発見された。
ここでは、その資料を中心に議論を進めたい。
当該文書は厚労省の公式サイトにある。
2009年3月24日付け、薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班作成の資料1-4『検証:薬害肝炎に対する血液製剤製造会社の責任 中間報告(案)』である。
この資料1-4の114頁に掲載されている図表4-61を以下に示す。
問題の文章を引用する。
現在までのところ肝炎ウイルスの存在の有無を証明する信頼すべき試験方法が存在しない。従ってウイルスの存在はあるものと見るべき
この文章は、1971年9月にミドリ十字社が血液製剤を厚労省に承認申請をする際に作成した当該薬剤の添付文書に記載した文書で、厚労省が作成した文言ではない。しかし、厚労省は肝炎ウイルスの存在を証明する手段が存在しないことが、ミドリ十字の指摘により知っていたことの証拠となる文書である。
その一方で、同資料の17頁及び132頁には、1986~1987年及び2003年に、遺伝子解析により製剤中に肝炎ウイルスが存在していることを証明したと書かれている。
しかし、ここで注意が必要なのは、遺伝子解析は病原ウイルスが存在することを前提にしている技術である。新型コロナウイルスも遺伝子解析はされているが、存在は証明できない。
同様に、2009年3月24日付け、薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班作成の資料5-1『検証5:当該薬品による肝炎発症の危険性及び肝炎の重篤性に関する知見の進展と医療現場への伝達状況中間報告書(案)』の9頁は肝炎ウイルスが発見されたことが書かれている。
9頁、図表5-3を以下に示す。
1968年にB型肝炎ウイルスが発見され、1973年にA型肝炎ウイルスが発見されたと書かれている。
ここで、この表記が「発見」であり「存在の有無の証明」ではないことに注意が必要である。ただし、この「発見」の意味は不明である。
問題となるのは、上記添付文書の記述は1971年であることである。この時点で、存在の有無を証明する信頼すべき試験方法が存在していないのに、1968年に存在が証明できるわけがない。この「発見」の意味を「存在の有無を証明した」と解釈すると矛盾するので、「発見」とはそういう意味ではないことが分かる。
更に、2009年3月24日付け、薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班作成の資料1-2『検証2:薬害肝炎拡大と被害の実態 中間報告書(案)』には、肝炎ウイルスの存在が不確かであることが分かる記述がある。
以下に、36頁の当該文章を示す。
問題の文章は「仮に肝炎ウイルスが存在した場合」の部分であり、この文書が作成された2009年時点で、肝炎ウイルスが存在することを断言できないことを厚労省が認識していることが分かる記載をしている。
ここで示した文書「資料1-2」「資料1-4」「資料1-5」を通して見ても、肝炎ウイルスの存在の有無を証明する信頼すべき試験方法が開発され、肝炎ウイルスの存在を決定づける証明がされたことが分かるような説明の記載がない。
ミドリ十字の薬害の問題については、厚労省はミドリ十字が肝炎ウイルスの存在の有無を証明する信頼すべき試験方法が存在しないことを指摘していることを知りつつ、存在することを前提に薬害問題の報告書を作成していることが分かる。
また、感染症法第6条第5項第一号に「E型肝炎」が、同法同条同項第二号に「A型肝炎」が規定されていることから、厚労省は病原体の存在が証明されていないにもかかわらず、存在することを前提に感染症法に感染症を規定していることが分かる。
上記の根拠を示して、厚労省や感染研に令和6年9月24日付けで、以下の質問をした。
質問
令和6年9月現在で、感染症法に規定されている感染症の病原体及び特定病原体等の中で、その存在の有無を証明する信頼すべき試験方法が存在する病原体を教えて下さい。可能でしたら、その証拠もお知らせ頂けますと有難いです。
しかし、この記事を書いている令和6年10月26日現在でも、回答は得られていない。
「病原ウイルスの存在の有無を証明する信頼すべき試験方法が存在しない」ことは紛れもない事実である。そして、その事実から、感染症法に規定されている全ての感染症は、「病原体が存在することを前提」にして規定されている。このことが裏付ける厚労省の文書が発見されたことは大きい。今後もこの文書を使って厚労省を追い詰めていきたい。