第4章 感染症法

3 法が科学を凌駕する

令和6年1月17日公開

この章では法が科学を凌駕する事例を公衆衛生法や感染症法で見てきた。これは法が経典となり、科学的議論を許さないことを意味する。実際、公衆衛生法では、多角的な原因究明を許さなかった。感染症法においても、過剰な感染症対策に疑問を呈しても、科学的な議論は難しく、一方的に感染症ありきで批判を許さなかった。

この節では、感染症対策においては法が全てであり、一般的な定義は脇に置かれて法の定義が全てであることについて紹介する。

法の定義が優先する

本サイトの「基礎知識」の「1 病原ウイルスの定義」で病原ウイルスが病原体の定義を満たしていないことを書いた。その一方で、感染症法第6条で病原ウイルスが病原体であると定義されている。そこで、この矛盾に対して、令和5年12月28日付けで感染研や日本ウイルス学会、地衛研に以下のような質問をした。

一般的に病原ウイルスを感染症の病原体と呼んでいることに疑問があり、調査しています。
是非ともご協力ください。

病原ウイルスは単離できないため、未だにその存在が確認されておらず、生化学的な特徴付けができない状況にあり、病原ウイルスの特徴と呼ばれているもの全てが仮説にすぎないことはどのウイルス学者も否定できません。病原ウイルスの設定では、生物の条件である(1)細胞を基本単位とする、(2)代謝する、(3)自己増殖できる、のいずれも満たしておらず、生物とは呼べません。一方、病原体は、ある生物に寄生し病気を引き起こす生物のことであり、生物の定義を満たしていない病原ウイルスは病原体の定義を満たしていません。それは、寄生の定義からも明らかで、寄生は生物と生物の関係によって起こる現象であるから、このことからも病原ウイルスは病原体と呼べないのは明らかです。この問題は、冒頭で述べたように病原ウイルスが単離できないことに起因するもので、仮説にすぎない病原ウイルスが病原体の定義を満たしていることが確認されることなく、病原体と呼ばれていることに重大な問題があります。つまり、病原ウイルスの単離技術を確立し、その存在を確認した上で、その生化学的特徴づけがされた後、生物と呼べることが確認される、もしくは病原体の定義を満たしていることが確認されるまでは、病原ウイルスを病原体と呼ぶべきではないと考えます。

そこで質問です。
病原体の定義を満たしていない病原ウイルスがなぜ病原体と呼ばれるのでしょうか。
その根拠は何だとお考えになりますか。

この照会に対して、令和6年1月11日付で仙台市健康福祉局衛生研究所より、以下のような回答を得た。赤字は筆者によるものである。

このたびお問い合わせいただいた件につきまして、下記のとおり回答します。

言葉の定義については、根拠となる法令の規定に従っています。

感染症対応にあたっては、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「感染症法」という。)が根拠法令であり、その第6条において、病原体として主に細菌・ウイルスが定義されています。

なお、感染症法では、病原体が生物であるか否かについては言及されていません。

 

令和6111

 

地衛研は行政であるから、法に従うことは十分に理解している。がしかし、彼らはウイルス研究者でもある。ウイルス学における定義と法の定義に齟齬があった場合、違和感を持たない様子に疑問でしかない。それよりも病原体が生物であるかの判断は、ウイルス学での定義ではなく法の定義によるという回答は、明らかに法が科学を凌駕していることを示唆している。

正確に言うと、ウイルス学も感染症も仮説にすぎず厳密に言って科学と呼べるのか大いに疑問であるから、法が科学を凌駕しているのではなく、ウイルス学や感染症は法を根拠としている非科学的な領域であることを示唆している。何故なら、法の前では、科学的に批判することができず、科学的な議論が不可能だからである。

病原体の定義

感染症法第6条で病原体に関する定義は第17項で規定されている。以下に示す。

17 この法律において「病原体等」とは、感染症の病原体及び毒素をいう。

ここでこの法律における「感染症」がどのように定義されているのかが問題になるが、同条第1項に次のように規定されている。

第六条 この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症をいう。

このように、この法に規定されている感染症を「感染症」と呼んでいることが分かる。そして、それぞれの感染症ではその病原体が規定されているので、第17項の「感染症の病原体」は、規定されている感染症に規定された病原体を指していると考えられる。例えば、新型コロナウイルス感染症の病原体の規定は同条第7項第三号に規定されている。以下に示す。

 新型コロナウイルス感染症(新たに人から人に伝染する能力を有することとなったコロナウイルスを病原体とする感染症であって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。)

このように確かに法律では、新型コロナウイルス感染症の病原体はコロナウイルスであると定義されている。それ故に、仙台衛研は病原ウイルスは病原体であると法律で定義されていると主張しているのである。例え、病原ウイルスの設定が病原体の定義を満たしていなくても法律が規定しているから問題ないということである。恐らくこれは正しいのであろう。病原ウイルスはツチノコと同じで未確認の物質である。科学的には何も証明できないのであるから、いかなる矛盾を吸収してくれる法に頼らざるを得ないのだろう。これはウイルス学が科学ではないことを証明しているに等しい。

まとめ

一般的な定義に矛盾が存在していても、法律に定義されているから問題ないと考える姿勢が公的な研究機関にあるという一例を示した。公的機関だから法に基づいているという説明はあり得るのかもしれない。大学等に所属する学者たちは、この問題に対してどのように説明するのか、機会が得られたら聞いてみたい。

私の予想ではおそらく法律を根拠にするだろうと考える。それは病原ウイルスが単離できない以上、病原ウイルスの設定は仮説にすぎないため、科学的な根拠を示すことができないからだ。今までは、その科学的な根拠を求められることがなかったから、なんとかごまかすことができていたのかもしれないが、病原ウイルス粒子の存在自体について科学的な議論が行われたら、科学的根拠を何一つ示すことができず、法律の定義に頼らざるを得なくなるからだ。

つまり、病原ウイルスは法を根拠にするしかない非科学的な存在ということである。


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