第二審

答弁書

答弁書の内容を理解しやすくするために控訴人の「控訴理由書」の記述内容も記載する。

事件番号 令和 6 年(行ヌ)第 1 号
控訴提起事件
控訴人  有馬ジキ
被控訴人 山形県 他 1 名

答弁書

令和6年5月9日

仙台高等裁判所第3民事部C係 御中

上記被控訴人ら訴訟代理人

弁護士 ●●●●    

第1 控訴の趣旨に対する答弁

1 控訴人の請求を棄却する。

2 控訴費用は、控訴人の負担とする。

第2 「第1 控訴の理由」に対する答弁

1 同「1 第2事案の概要の1」について

(1) (1)について

(1) 令和 3 年 8 月 19 日に控訴人が●●●●教頭(以下「教頭」という。)に呼び出され面談が行われた。

第1文は認める。

その面談において控訴人は、過剰な感染症対策が児童生徒の学習機会を奪っていたり(甲 30)、健康被害 ¹⁾ や死亡事故²⁾ が起きていたりして、それまでに繰り返し控訴人が所属する県立●●●●学校(以下「本件学校」という。)に問題提起をしていたが、無視され続けてきたので、マスクをはじめとする感染対策の無意味さ³⁾ や害が広く知られることを期待してマスク着用の拒否を表明した。

第2文のうち、控訴人がマスク着用の拒否を表明したことは認め、その余は不知。

それを受けて教頭は、同年同月 23 日の午前8:00 に校長室に来るよう控訴人に指示した。

第3文は認める。

(2) (2)について

(2) 教頭の指示通り控訴人が校長室に出向くと、●●●●前校長(以下「前校長」という。)はマスク着用は職務命令であると述べた。

第1文は認める。

同日午後の校長面談において前校長からマスクを着用すれば授業に参加できると言われたので(甲24)、控訴人は命令に従うことにし翌々日から授業に参加している⁴⁾ 。

第2文のうち、校長の甲24号証の発言及び控訴人が翌々日から授業に参加していることは認めその余は不知。

(3) (3)について

(3) 令和 4 年 2 月 22 日に化学物質過敏症の診断書(甲 3)と共に、マスク着用免除申請書(甲 2)を学校に提出し、同年 3 月 8 日にその申請が認められた(甲4)。

第1文のうち、同年3月8日にその申請が認められたとする点は否認し、その余は認める。

その際、教頭からマスク着用の代替案としてネックウォーマーが提示され(甲 4)、控訴人はその指示に従っていた。

第2文のうち、教頭からマスク着用の代替案としてネックウォーマーが提示されていたとする点は否認し、その余は不知。

(4) (4)について

(4) 令和 4 年 4 月 1 日に●●●●現校長(以下「現校長」という。)が本件学校に着任した。

第1文は認める。

現校長は、マスクを着用できない者から他の職員や児童生徒の命を守るためという理由で、前校長が認めていた代替手段で対応していて特に問題が起きたわけでもなく、その代替手段に何の問題があるのかについても説明することもなく、健康で無症状の控訴人に対して不意打ちのように、クラス担任を外し別室勤務を控訴人に命じた(以下「本件命課」という。)(甲 1)。

第2文のうち、●●校長が、クラス担任を外し別室勤務を控訴人に命じたことは認め、その余は否認乃至不知。

(5) (5)について

(5) 令和 5 年 1 月 11 日の面談で控訴人の「あなたが協力依頼に応じないから、この仕事を命課します、となぜ言わなかったんですか?」という問いに対して、現校長は「その時は、そうでなかったもんね。」と回答した(甲 10)。

認める。

(6) (6)について

(6) 同面談において、控訴人に協力に応じないなどの非があるのかという問いに、現校長は「いや、非はないよ。別に。」と回答している(甲 10)。

第1文は認める。

(7) 「以上より」以下の記述について

以上より、控訴人は前校長の職務命令に従っており、正当な理由及び手続きで以てマスク着用の免除が認められ、且つ教頭の指示である代替案で対応していた。したがって、「応じなかった」という事実はないし、現校長も控訴人に非がないことを認めている。

また、本件命課の理由は、控訴人が文部科学省(以下「文科省」という。)発出の衛生管理マニュアル(乙 7)や令和 3 年 7 月 5 日付け被控訴人山形県教育委員会(以下「被控訴県教委」という。)発出の通知(以下「県教委通知」という。)(乙 3)に沿った協力依頼に「応じなかった」からではない。

 

本件命課の理由は「命を守るため」であり、前校長が認めていた代替手段で控訴人が応じていて特に問題が発生していたわけでもないにもかかわらず、前校長から現校長に変わった途端、代替手段の問題点を指摘することも何の説明をすることもなく、控訴人に対してクラス担任を外すなど、より多くの感染症対策を命じたのである。この方針変更は控訴人にとって予測可能性がなく不意打ちであり、現校長の一方的な命課に対して控訴人は妥協点を探ることもできず多大な不利益を被った。

全て否認乃至争う。

2 同「2 第2.4.(2)争点3(本件命課の違法性)のア」について

原審判決文〔5 頁〕に、「本件学校の校長は、本件命課の以前から、新型コロナの感染対策を理由に、原告に対してマスクの着用を強要し続けたうえ」とあるが、事実誤認である。

第1段落は争う。

事実は、前述の第 1.1.(2)〔3 頁〕の通りマスク着用を職務命令によって強要したのは前校長であり現校長ではない。

第2段落の第1文は否認し争う。

現校長が控訴人に対してマスク着用を強要した事実はない。

第2文は認める。

3 同「3 第3.3.(1)認定事実(後掲証拠等により認められる事実)のイ」について

原審判決文〔10 頁〕に、「上記通知を受け、本件学校でも、上記通知に基づく感染症対策が取られるようになったが、原告は少なくともこの頃には学校内で常時マスク着用をすることを拒否するようになっていた。」とあるが事実誤認である。

第1段落は争う。

 

事実は、前述の第 1.1.(1)〔3 頁〕の通り令和 3 年 7 月 5 日付け県教委通知以降、同年 8 月 19 日に初めて教頭に対してマスク着用の拒否を表明したのであって、それ以外で拒否した事実はない。

第2段落のうち、同年8月19日に始めて教頭に対してマスク着用の拒否を表明したことは認め、その余は不知。

4 同「4 第3.3.(1)認定事実(後掲証拠等により認められる事実)のイ」について

原審判決文〔10 頁〕に、「教頭は、原告がワクチン接種状況の調査にも無記入で回答したため、令和 3 年 8 月 19 日、原告と面談をした。」とあるが事実誤認である。 

第1段落は争う。

被控訴県教委作成の文字起こし(甲 24)には「無記入で回答したため」と書かれているが、事実は、令和 3 年 8 月 19 日に控訴人が教頭に送信したメールでワクチン接種状況の調査に回答するとともに、マスク着用を拒否する旨を書いたために、同日に教頭が控訴人を呼び出し面談を行ったのである。

第2段落は認める。

5 同「5 第3.3.(1)認定事実(後掲証拠等により認められる事実)のエ」について

原審判決文〔11 頁〕に、「令和 4 年 3 月 14 日、原告に対して、高畠町立高畠中学校への異動内示が出された。これに対し、原告は手続きに不備があるとして異議を唱えたところ、同月末日、異動内示は取消となった。」とあるが事実誤認である。

第1段落は争う。

事実は、訴状第 2.4.(12) 乃至(13)〔6 頁〕に記したように、令和 4 年 3 月 24日に京都の南出喜久治弁護士に本人の承諾を得ない校種変更の異動は違法であり、控訴人が承諾したという文書が被控訴県教委によって作成された可能性があると教えられたので、同年同月 25 日に控訴人が被控訴県教委に対して、控訴人が異動を承諾したという文書が存在するのか確認しただけである。異議を申し立てた事実はない。

第2段落は不知。

6 同「6 第3.3.(2)判断のイ、第2段落」について

原審判決文〔13 頁〕に、「翌年 2 月以降は、化学物質過敏症等と記載された診断書を得て、マスク類の着用を一切拒否するようになったことを受け」とあるが事実誤認である。

第1段落は争う。

 

事実は、前述の第 1.1.(3)〔3 頁〕の通り控訴人のマスク着用免除申請が受理されて、控訴人は教頭の代替案を受け入れて指示に従っていたのである。

第2段落は、第1文のうち、控訴人のマスク着用免除申請が受理されたとする点、及び教頭が代替案を提示したとする点は否認し、その余は不知。

控訴人には、衛生管理マニュアルや県教委通知通りに感染症対策を行えない正当な理由があり、正当な手続きによって本件学校から免除が認められ、同学校が提示した代替案に従っていたのである。

第2文は、不知。

原告が一切拒否していたという事実はない。

第3文は否認する。

7 同「7 第3.3.(2)判断のイ、第4段落」について

原審判決文〔13 頁〕に、「校長によるマスク着用の職務命令に応じない原告」とあるが事実誤認である。

第1段落は争う。

 

事実は、繰り返しになるが、現校長がマスク着用の職務命令をした事実はないし、控訴人は前校長のマスク着用の職務命令に従っていたのであり、且つ令和4 年 3 月 8 日以降は前校長が認めていた代替案に従っていた。前述の第 1.1.(2)〔3 頁〕の通り、控訴人が前校長によるマスク着用の職務命令に応じなかった事実はない。且つ、前述の第 1.1.(6)〔3 頁〕の通り、現校長は控訴人が協力に応じていない事実がないことを認めている。

第2段落は不知乃至否認する。

8 同「8 第3.3.(2)判断のイ、第6段落」について

原審判決文〔14 頁〕に、「感染防止対策を完全に拒否していた原告」とあるが事実誤認である。

第1段落は争う。

 

事実は、これまで繰り返し述べてきた通り控訴人が感染防止対策を完全に拒否していた事実はない。

第2段落は不知乃至否認する。

9 同「9 第3.3.(2)判断のイ、第6段落」について

(1) 第1段落は争う。

原審判決文〔14 頁〕に、「必要性がある措置であった」とあるが事実誤認である。

(2) (1)について

(1) 令和 4 年 10 月 19 日の面談において、控訴人の「でも、そうしたら(マスクをしないで)話をしたら感染が広がるんですよっていうことを言わないといけなくなる。」という指摘に、現校長は「そんなことまだ分かんないしな。」と回答しており(甲 9)、現校長はマスク着用によって感染防止になることの真偽は不明であることを認識している。

現校長はマスク着用によって感染防止になることの真偽は不明であることを認識しているとの点は否認し、その余は認める。

(3) (2)について

(2) 被控訴県教委が発出した通知(乙 3)の 5 教職員の対応〔9 頁〕には、「職員室においても身体的距離の確保に努め、必要に応じて別室で業務を行う等の対応を取ること。」(太字は控訴人による。)とあるが、繰り返し述べているように前校長が認めていた代替手段で対応していて感染拡大等の問題が何も起きていなかったのだから、代替手段に問題があり控訴人を別室勤務させる必要があると現校長が判断する理由がない。

通知(乙3)の記載の事実は認め、その余は否認乃至争う。

(4) (3)について

(3) 前述の第 1.1.(5)〔3 頁〕の通り、令和 5 年 1 月 11 日の面談で、本件命課の理由が協力依頼に応じないからではないことが明らかにされている。

否認する。

(5) (4)について

(4) 同日の面談で、控訴人の「感染症予防は医療です⁵⁾ 。医療であるから、十分な説明が必要です。で、本人の承諾が必要なんです。 それは理解していますか?」(太字は控訴人による。)という問いに、現校長は「今、言ったことは分かる。」と返答しており(甲 10)、現校長は感染症対策は医療であり、本人の承諾が必要であることを理解している。

現校長は感染症対策は医療であり、本人の承諾が必要であることを理解している点は不知乃至否認し、その余は認める。

(6) (5)について

(5) 同様に、控訴人の「よりもっと多くの感染症対策を求めるのであれば、今の状態がこういう問題があるっていうことを説明しなければならないし、私の承諾を得なければならないんですよ。それを怠ったわけでしょ?」という指摘に、現校長は反論できなかった(甲 10)。つまり、前校長が認めていた代替手段の問題点を、現校長は指摘することができない。

「同様に、控訴人の~」から「それを怠ったわけでしょ?」という指摘」までは認め、その余は不知乃至否認する。

(7) (6)について

(6) 同日の別の面談において、控訴人の「それを理由に仕事外しもできない。」という指摘に、現校長は「うん。」と答えており(甲 11)、マスク着用が困難であることを理由に仕事外しができないことを認めている。

第1段落の、「同日の別の面談において~」から「~と答えており」までは認め、その余は否認する。

(8) 「以上より、」以下の段落について

以上より、現校長はマスク着用が感染防止になることの真偽は不明であることを認識し、前校長が認めていた代替手段の問題点を指摘できず、感染症予防は医療であることも理解し、マスク着用困難を理由に仕事外しができないことも認めていることから、健康で無症状の控訴人が前校長の認める代替手段に従っていて、それで感染拡大などの問題が発生していなかったにもかかわらず、より多くの感染症対策を命課する必要性があったと主張するのは極めて無理がある。

問題は、前校長から現校長に校長が交代することで突然方針が変更されたことである。その方針変更において現校長は代替手段の問題点を命課してから 10 カ月過ぎても説明できないように、現校長が熟慮の上で命課したわけではないことは明らかである。要するに、本件命課は恣意的であって、合理性や正当性を主張できる命令とは言えない。繰り返すようだが、この方針変更は控訴人にとって予測可能性がなく、妥協点を探る機会すら与えられない一方的な命課であることは明らかであり、控訴人にとって不利益でしかない。前校長が認めていた代替手段の問題点を現校長が説明できない方針転換が、必要性のある措置であったと主張するのは極めて無理がある。

全て否認し争う。

10 同「10 第3.3.(2)判断のイ、第7段落」について

原審判決文〔14 頁〕に、「マスク等の感染防止効果を否定し、マニュアルや学校運営方法が定める感染防止対策に従わない意向を示していた原告の業務場所を職員室と別の部屋に指定したことは、職員室での感染防止対策として必要かつ相当なものであったというべきである。」 とあるが、これは問題発言である。

何故ならば、国や県及び学校の方針の問題点を指摘し、異議を唱えることは、憲法第 19 条及び第 21 条で保障された国民の権利であるからである⁶⁾。また、訴状第 2.6.(1)〔36 頁〕で指摘した通り、控訴人の信条を理由に本件命課が正当性を帯びるのであれば、地方公務員法第 13 条に抵触する。同様に、訴状第 2.6.(5)〔38 頁〕で指摘した通り、労働基準法第 3 条に抵触する。

繰り返しになるが、控訴人は前校長のマスク着用の職務命令に従ってきた。例え、衛生管理マニュアルや学校運営方法と異なる感染防止対策を取っていたとしても、それは正当な理由により、正当な手続きで前校長に認められていた代替案に従っていたのである。確かに、国や県及び学校の方針の問題点を指摘していたが、それは事実や科学的知見に基づく見解⁷⁾ であって、且つ、それは法で認められる範囲内の事項である。一方、指摘はしていたが、控訴人は前校長の職務命令や教頭の代替案の指示に従っていたのである。更に、協力依頼に応じないことが本件命課の理由ではない。

否認し争う。

11 同「11 第3.3.(2)判断のイ、第7段落」について

原審判決文〔14 頁〕に、「原告が命じられた業務の内容は、別紙のとおりであり、教員が行う業務に関するものといえる」 とあるが、事実誤認である。

事実は、令和 4 年 7 月 1 日に別室勤務が解かれ、職員室勤務に変更されて以降、教頭の監視下で業務を行わなければならなくなり、業務内容も教頭の業務の下請けを行うようになった。つまり、教頭が行うべき業務を依頼されるようになった。乙第 5 号証で挙げられた業務の中で、例えば、校内及び校外巡視は教頭の責任で行われる業務である。しかし、警備員に指摘される巡視の不備に対して、控訴人の見落としではなく、教室管理担当教員の見落としでも、控訴人の責任であるとして警備員の巡視結果の用紙に印を押すよう言われていた。本来ならば、依頼した教頭にも責任があるし、安全管理の面で言えば教頭自らも巡視するべきであるが、教頭は何も責任を取ろうとはしなかった。また、新聞の切り抜き作業は、控訴人が作成した資料を誰も見ていないし、令和 5 年度は作成していない。つまり、必要のない業務である。このような業務は挙げればきりがない。

原告準備書面 (1) 第 2.2.(7)〔8 頁〕でも示したように、教頭に「丸投げのように言い渡される業務や高圧的な態度、監視など」が控訴人にとってストレスフルであったからこそ、令和 4 年 11 月 1 日の教頭面談でパワハラの訴えを教頭にしている。その際に、この業務は「屈辱である。」と教頭に伝えているが、現校長も教頭も控訴人の訴えを無視した。

否認し争う。

12 同「12 第3.3.(2)判断のウ、第2段落」について

原審判決文〔15 頁〕に、「特措法上の基本的対処方針である「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」は、新型コロナ対策本部が設置した新型コロナウイルス感染症対策専門家会議による医学的・科学的観点からの議論を踏まえて策定されたものであり⁸⁾ (公知の事実)、前記マニュアルや学校運営方法が定める感染防止対策もこれに基づくものであるから、病原体の存在に疑間を呈する見解⁹⁾ や、マスク着用の感染防止効果について疑間を呈する見解¹⁰⁾ が存在することはともかくとして、これが医学的・科学的根拠のないものであるといえるものではない。」とあるが事実誤認である。

第1段落は争う。

事実は、脇田隆字国立感染症研究所長が監修し、正林督章前厚生労働省健康局長が編集した『令和4年度地域保健総合推進事業新型コロナウイルス感染症対応記録』¹¹⁾ 〔128 頁〕に、「危機管理活動という営みは、科学ではない。アート(運用術)である。科学に基づく危機管理や、エビデンスに基づく危機管理など存在しない(この点、わが国では誤解があるようである)。」と書かれており、感染症における危機管理は科学的根拠に基づかないことを国は認識している。

病原体が人に感染して病気を起こすという病原菌説(Germ Theory)は、それを提唱したルイ・パストゥール¹²⁾ の時代に、アントワーヌ・ベシャン¹³⁾ がマイクロザイマス¹⁴⁾ を発見したことにより、病原菌説の間違いが証明されている¹⁵⁾ 。しかし、パストゥールがナポレオン三世の側近であったため、ベシャンの発見を側近らがベシャンに取り下げるよう圧力をかけたのは、歴史的事実である。

現在でも病原菌説は仮説であり¹⁶⁾、この仮説において無症状感染者が多数確認されるが、これは病原体と病気の因果関係を証明するための指標であるコッホの原則の第一原則「その微生物は、病気に罹患しているすべての生物で豊富に存在しなければならないが、健康な生物では存在してはならない。」に反する¹⁷⁾。

したがって、病原体と病気との因果関係は未だに証明されていないのも事実である¹⁸⁾。

その病原菌説に基づく「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、「感染症法」という。)第 6 条では、国が「国民の健康に影響を与えるおそれがある」と判断するだけで、科学的根拠が不在であっても感染症を規定できる仕組みになっている。当該感染症を含む全ての感染症においては、技術的な理由で以て病原ウイルスの存在は確認できていない¹⁹⁾ のであるが、そのため、病原体の感染性や病原性の有無²⁰⁾、及び毒性の程度などの生化学的特性を分析することができない²¹⁾。だから、山形県衛生研究所が病原体の存在は前提であると回答するのであり(甲 16)、山形県は感染症が発生している前提であると回答するのである(甲 28)。

問題は、感染症法上で病原体が存在することになっていることから、感染症に関する科学的批判は国の方針に反するとして科学的な議論の俎上に上がらないことである。つまり、科学が科学である所以であり原則である、反証可能性が感染症の領域では存在しないのである。したがって、感染症の領域は科学とは呼べない²²⁾。

以上より、感染症の領域は法的根拠²³⁾ があるが、科学ではない²⁴⁾。政治である²⁵⁾。

その余は不知。

13 同「13 第3.3.(2)判断のウ、第2段落」について

原審判決文〔15 頁〕に、「原告は、その職務を遂行するに当たって、法令や地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従う義務を負うのであるから(地方公務員法 32 条)、職場においては、前記マニュアルや学校運営方針に沿った行動をすることが義務付けられるのであって」とあるが事実誤認である。

第1段落は争う。

(1) 衛生管理マニュアル(乙 7)の「はじめに」に「学校の参考となるように作成したものです。」と書かれており、当該マニュアルは教員に義務付ける類の文書ではない。

(2) 現校長は県教委通知を「お願い」と称しており(甲 9)、現校長は当該通知が教員に義務付ける類の文書ではないことを認識している。

(3) 訴状第 2.5.(9)〔17 乃至 18 頁〕に「令和 5 年 1 月 11 日に原告と行った面談において、十分な説明を怠っているという指摘に対して何も反論できず、原告に何ら非がないことを認めている。」と指摘しているように、現校長は控訴人が命令服従義務違反などの違反行為がないことを認めている。

(4) 控訴人は当該マニュアル通りに感染症対策ができない正当な理由があり、正当な手続きで以てマスク着用の免除が認められ、前校長が認めた代替手段に従っていた。

以上より、控訴人が地方公務員法第 32 条に反するような行動を取っていないことは明らかである。

(1)乃至(4)は否認し争う。

14 同「14 第3.3.(2)判断のウ、第2段落」について

原審判決文〔15 頁〕に、「これに反する見解のもと、感染防止対策をしないことは許されないというほかない。」とあるが事実誤認である。

第1段落は争う。

控訴人が「これに反する見解のもと、感染防止対策」は必要ないし、寧ろ害でしかないという結論に達しているのは、前述の第 1.12〔11 頁〕の通り歴史的・科学的な事実に基づいて判断しているからであり、法的根拠しかない科学的な批判が多数存在する過剰な感染症対策で児童生徒が被害を受けている²⁶⁾ からである(甲 30 及び 31)。繰り返しになるが、そのような意向や信条は法で許される範囲の事項である。

また、これまで繰り返し述べてきたように、そのような意向を抱いていても、前校長が認めた感染防止対策を行ってきたことは紛れもない事実であり、本件命課の理由は協力依頼に応じないからではない。

第2、3段落は否認し争う。

15 同「15 第3.3.(2)判断のウ、第3段落」について

原審判決文〔16 頁〕に、「感染防止対策に協力できない教員を特別支援学校の小学部のクラス担任とすることは著しく困難である」とあるが、事実誤認である。

第1段落は争う。

事実は、これまで繰り返し述べてきたように、衛生管理マニュアルなどが推奨する感染防止対策に沿って対策が取れなかったのは、取れなかった正当な理由があり、正当な手続きによって前校長が認めた代替手段で感染防止対策を行っていたからである。「協力できない」のではなく、学校で認められた方法で協力していたのであり、本件命課の理由は協力依頼に応じないからではない。

第2段落は否認する。

16 同「16 第3.3.(2)判断のウ、第3段落」について

原審判決文〔16 頁〕に、「校長の措置はやむを得ない措置というべきであり、これが制裁であったとは解しがたい。 」とあるが事実誤認である。

第1段落は争う。

本理由書で繰り返し述べてきたように、控訴人は前校長の職務命令に従い、前校長に認められていた代替手段で感染症対策を行っていた。且つ、本件命課の理由は協力依頼に応じないからではない。

上記事実に反して、被控訴県教委発出の文書(甲 8)〔2 頁〕に、被控訴県教委が「協力を得られなかった。そのため学年分掌に属さず、(中略)という立場で勤務することを命じた。」と書いたり、別文書²⁷⁾ (甲 21)〔4 頁〕に、「認めていない。」と書いたり、原審判決文で繰り返し控訴人が職務命令や協力に応じないと書かれたりするのは、控訴人が命令服従義務に違反していなければ本件命課の合理性や正当性を主張できないからであるが、現校長が認めているように控訴人は命令服従義務に違反していないのだから、その理由で以て本件命課の合理性や正当性を主張できないのは明らかである。仮に控訴人の命令服従義務違反を持ち出すのであれば、違反に対する制裁の性格が本件命課に帯びてくることになる。

被控訴県教委の文書(甲 8)に書かれているように、控訴人が協力に応じないことが本件命課の本当の理由であるならば、控訴人は協力に応じていないという事実がないため、これは甚だしい言いがかりである。それ故、控訴人は、本件命課がこの言いがかりに基づく制裁であると主張したのである。

しかし、本件命課の合理性や正当性が問われるのは、本件命課の理由である「命を守るため」である。前校長が認めていた代替手段に応じており、その代替手段で何も問題が起きていなかったにもかかわらず、現校長が着任した途端、突然方針変更が変更され、尚且つその方針変更の必要性を説明する代替手段の問題点を命課をした年の翌年になっても現校長が指摘できない状況で、控訴人から児童生徒や教職員の命を守るという理由に合理性や正当性が認められるかについてに他ない。

しかし、令和 4 年 6 月 8 日の面談において、控訴人の「命ってどういうことですか。かなり大袈裟ですよね。(中略)命、死ぬってことですよね。」という指摘に、現校長は「あ、そこまでは考えては、そういうこともあるかもしれないけど、ま、そういう言葉を使ってしまったんだな。」と答えている(甲 6)。この回答が、如何に本件命課が熟慮のない恣意的な判断によるものであることを物語っている。

第2段落乃至第6段落は否認し争う。

17 同「第2 結語」について

否認し争う。

第3 被控訴人らの主張

原審判決には、控訴人が主張する事実誤認は認められない。

本件命課には違法性はなく、本件控訴は速やかに棄却されるべきである。

以上