令和5年12月31日公開
ここでは、分離の起源、すなわちどのような経緯で、細胞変性効果を病原ウイルスの存在証明に利用しようとしたのか、について紹介する。
ウイルス学者は「分離」が病原ウイルスの存在を示すことの根拠に、ジョン・F・エンダース博士の論文「Propagation in Tissue Cultures of Cytopathogenic Agents from Patients with Measles」⁽¹⁾を参考文献に使うようである。ステファン・ランカ博士は次のように述べている⁽²⁾。
The virologists who maintain the existence of disease-causing viruses refer to a single publication [translator’s note: https://pubmedinfo.files.wordpress.com/2017/01/propagation-in-tissue-cultures-of-cytopathogenic-agents-from-patients-with-measles.pdf] to justify their actions and pass them off as science, this is easily recognisable as mind-bogglingly unscientific.
(邦訳)
病気を引き起こすウイルスの存在を主張するウイルス学者が、自分たちの行動を正当化し、それを科学であるかのように見せかけるために、たった一つの論文[訳者注:https://pubmedinfo.files.wordpress.com/2017/01/propagation-in-tissue-cultures-of-cytopathogenic-agents-from-patients-with-measles.pdf]を参照するのだが、これは呆れるほど非科学的であることが容易に理解できる。
ちなみにこの論文は当研究所でも邦訳しているので、ご興味があればご高覧頂きたい。
「分離」と「培養」を同義にすることを考案したのは、上記論文の著者であるジョン・F・エンダース博士であると言われている。
彼はもともと生物学者ではない。Wikipedia「ジョン・フランクリン・エンダース」では以下のように説明されている。
エンダースはコネティカット州ウエストハートフォードで生まれ、ハーバードのノア・ウェブスター・スクール、ニューハンプシャー州コンコードのセント・ポール・スクールで教育を受けた。その後イェール大学に入学し、1918年にすぐにアメリカ空軍に入隊した。
このような経歴を持つエンダース博士は1945年にノーベル賞を獲得する。そのことがきっかけで彼の論文が注目されるようになったのである。ステファン・ランカ博士は次のように述べている⁽²⁾。
On the 10th December 1954 the lead author of the study, John Franklin enders received the Nobel Prize for a different speculation within the old “viruses are dangerous protein toxins” theory (refuted in 1951!), and this Nobel Prize achieved two things: the old, disproved toxin-virus theory was given a pseudo-scientific halo and the new genetic-virology was given the highest, supposed scientific honour. This in turn made sure that verification of the aforementioned measles publication never took place.
(邦訳)
1954年12月10日、この研究の主執筆者であるジョン・フランクリン・エンダースは、旧来の「ウイルスは危険なタンパク質の毒素である」という説(1951年に否定されている!)とは異なる推測でノーベル賞を受賞し、このノーベル賞は2つのことを達成した:旧来の反証された毒素ウイルス説は疑似科学的な後光を浴び、新しい遺伝子ウイルス学は最高の、想定された科学的栄誉を与えられた。 その結果、前述の麻疹の発表の検証が行われることはなかった。
つまり、1951年にそれまで信じられてきた「病原ウイルスは『タンパク質でできた毒素』である」という説が実験により否定されてしまい、ウイルス学者は実験ではなく合意形成でもって「核酸を含む感染性粒子」説をでっち上げたのだが、エンダース博士のノーベル賞受賞が後者の遺伝子ウイルス説を正当化し、且つこの論文も検証されることなくウイルス学者たちの主張の根拠となったのである。
そもそも生物学的知識のない人物が転向して生物学者になりノーベル賞を獲得するのは、一種のアメリカンドリームであるが、意図的なものを感じずにはいられない。ランカ博士は次のように述べている⁽³⁾。
He then simply transferred the ideas and concepts that he learned in this area of research to the supposed pathogenic viruses in humans. With his unscientific experiments and interpretations that he had never confirmed through negative controls, Enders brought the entire “viral” infectious medicine to a dead end. It is important to note at this point that Enders, like many infectious diseases specialists, worked for the U.S. military, which had always been and remains to date a huge victim of the fear of contagion. It was mainly the U.S. military which spread its erroneous belief that besides chemical weapons there were also biological weapons in the form of bacteria and viruses.
(邦訳)
そして、彼はこの分野の研究で学んだアイデアや概念を、ヒトの病原ウイルスとされるものに移し替えただけだった。エンダース氏の非科学的な実験と、陰性対照実験によって確認されたことのない解釈によって、「ウイルス性」感染症医学全体が行き詰まったのである。ここで重要なのは、エンダース氏が多くの感染症専門家と同様、米軍で働いていたことである 。米軍は昔から、そして現在に至るまで、伝染病の恐怖の巨大な犠牲者である。化学兵器のほかに細菌やウイルスの形をした生物兵器も存在するという誤った考えを広めたのは、主に米軍であった。
恐らく米軍という潤沢な資金を背景に言われるがまま研究を進め、期待通りの結果を出し続けたのだろう。そのご褒美がノーベル賞ではなかったか。仰せのままに研究できたのは、そもそも生物学者でなかったことが幸いしたと想像する。
さて、エンダース博士は米軍でポリオウイルスの培養実験を行っている。ランカ博士は次のように述べている³。
In 1949, Enders announced that he had managed to cultivate and grow the alleged polio virus in vitro on various tissues. The American expert opinion believed everything immediately. What Enders did was to add fluids from patients with poliomyelitis to tissue cultures which he claimed to have had sterilized, then he alleged that the cells were dying because of the virus, that the virus was replicating in this way and that a vaccine could be harvested from the respective culture. At that time, summer polio epidemics (polio = flaccid paralysis) were very frequent during summer and they were believed to be caused by polio viruses. A vaccine was to help eradicate the alleged virus. After the polio vaccine was introduced, the symptoms were then re-diagnosed among other things as multiple sclerosis, flaccid acute paralysis, aseptic meningitis etc. and later polio was claimed to have been eradicated.
(邦訳)
1949年、エンダース氏は、存在が疑わしいポリオウイルスを試験管内で培養し、さまざまな組織で増殖させることに成功したと発表した。 アメリカの専門家の意見では、すぐに全てが信じられた。 エンダース氏が行ったことは、滅菌したと主張する組織培養物にポリオ患者の体液を加え、その後、ウイルスが原因で細胞が死滅し始めたことから、この方法でウイルスを複製し、それぞれの培養物からワクチンを採取できると主張したのである。当時、夏にはポリオの流行(ポリオ=弛緩性麻痺)が頻繁に起こっており、その原因はポリオウイルスにあると考えられていた。この存在が疑わしいウイルスを根絶するために、ワクチンが開発されたのである。ポリオワクチンが導入された後、その症状は他の病気として多発性硬化症、弛緩性急性麻痺、無菌性髄膜炎などと診断し直され、後にポリオは根絶されたと主張されるようになった。
このようにしてエンダース博士は病原ウイルスを培養する方法を確立した。この培養手法は、繰り返しになるが、①病原ウイルスが存在すること、②細胞変性効果の原因が病原ウイルスの増殖である、という2つの前提で成り立っているのであるが、ではなぜ病原ウイルスが含まれているとされる体液を培養細胞に接種すると、その培養細胞が死滅するのか、それには巧妙なトリックが存在する。ランカ博士は続けて次のように述べている⁽³⁾。
During his experiments, Enders et al. sterilised the tissue cultures in order to exclude the possibility of bacteria killing the cells. What he didn’t take into consideration was that the sterilisation and the treatment of the cell culture when preparing it for the alleged infection was exactly what was killing the cells. Instead, he interpreted the cytopathic effects as the existence and the action of polio viruses, without ever having isolated a single virus and described its biochemistry. The necessary negative control experiments, which would have shown that the sterilisation and the treatment of the cells prior to the “infection” in the test tube was killing the cells, have never been performed. However, for this “performance” Enders received the Nobel prize in 1954.
(邦訳)
実験中、エンダースらはバクテリアが細胞を殺す可能性を排除するため、組織培養を滅菌した。彼が考慮に入れなかったのは、疑わしい感染の準備をする際の滅菌と細胞培養の処理が、まさに細胞を死滅させるものであったということである。 その代わりに、彼は細胞変性効果をポリオウイルスの存在と作用と解釈したのだが、ウイルスを単離し、その生化学的性質を説明したことは一度もなかった。試験管内での 「 感染 」の前に行われた滅菌と細胞処理が細胞を死滅させていた可能性を示すのに必要な陰性対照実験は、一度も行われていない。しかし、この「業績」に対してエンダース氏は1954年にノーベル賞を受賞した。
このように存在が証明されていない病原ウイルスを培養するという「手品」のトリックは、その培養の手順に隠されているのであるが、その種明かしである対照実験は今も昔も手品師の手によっては行われていない。それはこの手品が手品ではなく、永遠に科学であると主張したいがためである。ランカ博士は続けて次のように述べている⁽³⁾。
To date, no negative control experiments have been done with respect to the so-called measles virus either, which would have shown that it is the laboratory procedures that lead to the cytopathic effects on the cells. Additionally, all claims and experiments made by Enders et al. and the subsequent researchers lead to the only objective conclusion that in fact they were observing and analyzing dying cellular particles and the activity thereof in the test tube, misinterpreting these as particles and characteristics of the alleged measles virus.
(邦訳)
今日まで、いわゆる麻疹ウイルスに関しても陰性対照実験は行われていないが、その対照実験は細胞の細胞変性効果を引き起こすのは実験の手順であることを示すことになるだろう。さらに、エンダース氏らとそれに続く研究者たちが行った主張と実験はすべて、実際には試験管の中で瀕死の細胞由来の粒子とその活性を観察・分析していたのだが、それらを麻疹ウイルスとされるものの粒子と特性であると誤解していたという、唯一の客観的結論を導くものである。
恐らくエンダース博士はこの手品を科学であると信じていたであろう。イカサマ師の教え通りに。仰せのまま彼はこのポリオウイルスの培養の技術を麻疹に応用する。その結果、上述の論文につながっていくことになる。ランカ博士は次のように説明している⁽³⁾。
1954 is also the year in which Enders applied and introduced the same technique in order to allegedly replicate the measles virus. As he had been awarded the Nobel prize for the alleged polio virus the same year, all researchers believed his technique to be scientifically valid. Thus, to date, the entire concept of measles has been based upon this technique. Thus, the measles vaccines do not contain viruses, but particles of dead monkey kidney tissue or human cancer cells.
(邦訳)
1954年は、エンダース氏が麻疹ウイルスを複製すると考えているその目的のために同じ技術を応用し、導入した年でもある。同年、エンダース氏は存在が疑わしいポリオウイルスの研究でノーベル賞を受賞していたため、研究者たちは皆、エンダース氏の技術は科学的に有効であると信じていた。こうして今日に至るまで、麻疹の概念はすべてこのテクニックに基づいている。したがって、麻疹ワクチンに含まれているのはウイルスではなく、死んだサルの腎臓組織やヒトのガン細胞からできた粒子なのである。
この論文が、ポリオウイルスの研究で得たノーベル賞のお陰で、本人を含めて他の研究者もこの手品が科学であると信じてしまった。このような歴史がある。
実をいうと、エンダース博士は論文の中で、培養の対照実験を行っている。彼は論文で次のように述べている¹。赤字は筆者によるものである。
Two agents have been isolated while the present work was in progress that appear unrelated to those we have just described. The first was recovered from the throat washings of a typical case of measles occurring in the boys' school. Its wide cytopathogenic range, the character of the cytopathic changes induced and the fact that its infectivity for tissue cultures was neutralized by herpes simplex immune rabbit serum served to define its nature. A second agent was obtained from an uninoculated culture of monkey kidney cells. The cytopathic changes it induced in the unstained preparations could not be distinguished with confidence from the viruses isolated from measles. But, when the cells from infected cultures were fixed and stained, their effect could be easily distinguished since the internuclear changes typical of the measles agents were not observed. Moreover, as we have already indicated, fluids from cultures infected with the agent failed to fix complement in the presence of convalescent measles serum. Obviously the possibility of encountering such agents in studies with measles should be constantly kept in mind.
(邦訳)
本研究の進行中に、今述べたものとは無関係と思われる2つの病原体が分離された。最初のものは男子校で発生した典型的な麻疹患者の咽頭洗浄液から回収されたものである。その細胞病原性の範囲の広さ、誘発される細胞変性の特徴、組織培養に対するその感染性が単純ヘルペス免疫ウサギ血清で中和されるという事実が、その性質を明確にするのに役立った。第二の病原体はサル腎臓細胞に接種していない培養物から得られた。この物質は非染色標本で細胞変性を引き起こしたが、麻疹から分離されたウイルスと確信をもって区別することはできなかった。しかし、感染した培養細胞を固定して染色すると、麻疹の病原体に典型的な核内変化が観察されなかったので、その効果は容易に区別できた。さらに、すでに示したように、この病原体に感染した培養液は、回復期の麻疹血清の存在下で補体を固定することができなかった。明らかに、麻疹の研究においてこのような病原体に遭遇する可能性を常に念頭に置くべきである。
彼は、麻疹患者から得られた検体を接種せずに培養作業を行っている。その結果、摂取した場合と区別できないほど似通った細胞変性効果を確認した。しかし、彼はこの結果から何も接種していない培養細胞が細胞変性効果を引き起こしたことを理由に、培養細胞から病原体が現れたと解釈している。
そして、この論文で次のように結論付けた。赤字は筆者によるものである。
Eight agents exhibiting the properties of viruses have been isolated in cultures of human or simian renal cells from the blood or throat washings of five cases of typical measles. Multiplication of the agents in vitro is accompanied by characteristic changes in the cells. Primarily these changes consist in the formation of syncytial giant cells wherein the chromatin assumes a marginal position and is replaced centrally by an acidophilic substance of unknown nature. The cytopathogenic effect of at least one of the agents is inhibited by convalescent phase measles sera from other patients with measles. Antigen appears during cultivation in vitro of the measles agents that reacts specifically in complement fixation tests with convalescent phase measles sera.
(邦訳)
ウイルスの性質を示す8種類の病原体を、5例の典型的な麻疹患者の血液または咽頭洗浄液から、ヒトまたはサル類の腎細胞を用いた培養によって分離した。試験管内での病原体の増殖は細胞に特徴的な変化を引き起こす。主にこの変化は、クロマチンが辺縁に位置し、中心部が未知の好酸性物質で置換された合胞体巨細胞の形成である。少なくとも1つの病原体の細胞変性効果は、他の麻疹患者の回復期の麻疹血清によって阻害される。抗原は麻疹病原体の試験管内培養中に出現し、それは回復期の麻疹血清との補体固定試験で特異的に反応する。
このように、培養細胞が細胞変性効果を起こすとそこから抗原、すなわち病原ウイルスが現れると主張している。そして、「分離した」と述べている。このことについて、ランカ博士は次のように述べている⁽²⁾。
Enders and his colleagues put forward the notion in their publication on 1.6.1954 that cells which die in the test tube after the addition of supposedly infected material would be transformed into viruses.
This die-off is passed off as the isolation of the virus - as it is assumed that whatever has created the changes MUST have come from the outside.
(邦訳)
エンダース氏たちは1954年6月1日に発表した論文で、感染したと思われる物質を加えた後に試験管内で死滅した細胞がウイルスに変化するという概念を提唱した。
この死滅は、ウイルスの分離としてごまかされている。変化を引き起こしたものが何であれ、外から来たに違いないと思われているからだ。
このエンダース氏の主張、すなわち、試験管内で培養した結果、細胞変性効果が起きた培養細胞から病原ウイルスが出現するという説が、現在でも培養が病原ウイルスの存在を示す根拠となっている。そして、病原ウイルスが培養細胞から出現したと解釈することで、病原ウイルスを「分離」したと主張している。
ただし、誤解があるといけないので断っておくが、この培養作業では、何一つ培養は行われていないことに注意されたい。ただ、培養細胞が破壊され死滅したに過ぎない。そして、粉々になった培養細胞の破片で以て、ウイルス学者は病原ウイルスが増殖したと主張しているのである。
ウイルス学でいう「分離」の提唱者であるエンダース氏について述べた。「培養」が「分離」と同義で用いられる、その経緯や根拠について述べた。この「培養」は科学的な実験ではなく、トリックが存在する手品であって、詐欺である。彼らはシルクハットから鳩が出現するように、培養細胞から病原ウイルスが出現すると主張している。この手品の具体的なトリックについては以降、国立感染症研究所のマニュアル等で具体的に解説する予定である。
参考文献