第二審

控訴人準備書面(3)

事件番号 令和 6 年(行ヌ)第 1 号
控訴提起事件
控訴人  有馬ジキ
被控訴人 山形県 他 1 名

控訴人準備書面(3)

令和6年7月4日

仙台高等裁判所 第 3 民事部 御中

控訴人 有馬ジキ

本書面において、特に断らない限り、従前と同様の略称を用いる。

第1 控訴人の主張

1 乙第 9 号証について

(1) 乙第 9 号証には、迷惑な教員を担任業務から外した学校長の判断が、諸般の事情を考慮して止むを得ない措置であったと判断された判例が記載されている。具体的には、多数決で決められた事項についても自己の見解に反するものには従わず、給食指導を拒否したり、全校集会に参加しなかったりするなど、自己中心的で他の教員との協調性に欠けると判断された教員の訴えが退けられた判例である。

(2) この証拠が提出された背景に、控訴人が自己中心的で協調性に欠ける迷惑な教員であるが故に、●●元校長が控訴人を担任業務から外し別室勤務を命じた命課は、止むを得ない措置であったと主張したい意図が被控訴人らにあると推察する。しかし、控訴人は正式な手続きで以てマスク着用の免除が認められていて、▲▲元教頭から代替手段を控訴人自身が選択して感染対策を維持するように指示されたことに対して、▲▲元教頭が例に挙げたネックウォーマーによる代替手段を選択し実行していたと認識している。更に、●●元校長からは控訴人に対する命課は、控訴人に非があるからとかそういう事ではない(甲 10)と聞かされていることから、控訴人は何が迷惑行為だったのか不明であり、困惑している。逆に、控訴人に対して何が迷惑行為であるのか知らされていれば、改善の余地はあったと考える。

(3) また、迷惑教員を排除したことが致し方ない措置であったという主張であれば、県教委が考える命課理由は命課理由②であるということになる。したがって、被控訴人準備書面 1、第 1.1.(1). ア〔1 頁〕でも主張しているように、県教委が考える命課理由は命課理由③であるという主張に矛盾する。しかし、県教委通知(乙 3)通りに感染症対策ができない控訴人を排除した本件命課は、致し方ない措置であったと県教委が主張するのであれば矛盾しない。

(4) ただし、控訴人が迷惑教員であると主張するためには、本件学校の再三にわたる感染症対策の協力依頼に控訴人が拒否し続けていたと言わなければならなかったり、令和 4 年 3 月 8 日の▲▲元教頭の発言(甲 4)は、控訴人のマスク着用免除申請(甲 2)を受理したことを意味しないし、県教委も本件学校も控訴人が選択したネックウォーマーによる代替手段を認めていないと言わなければならなかったりする。そのために控訴人の認識と大きく異なっている。

(5) このような認識のずれが起こるのは、●●元校長らが控訴人の質問に誠実に答えなかったり、本件命課が不利益処分ではなかったにしろ説明書の交付請求(甲 50 及び 57)に対して、請求にあった質問に何一つ回答しなかったりしたからであると考える。したがって、現状の認識のずれが解消されないままであれば、代替手段の可否について水掛け論に終始してしまう。そこで、命課理由や代替手段に対する認識について本件学校や控訴人らの考えを明確に示して頂きたいと強く要望する。

第2 疑問点

前述の通り、認識のずれを解消するために以下の疑問点について回答していただきたい。

1 答弁書に関する疑問点

(1) 同書第 2.1.(7)〔2 頁〕について

控訴理由書、第 1.1「以上より」〔3 頁〕以下の記述の内容に対して「全て否認乃至争う。」とあるが、以下の疑問がある。

ア 控訴人のマスク着用免除申請(甲 2)を本件学校は不受理としたのか?

イ 本件学校が免除申請(甲 2)を不受理としたのであるならば、不受理としたことを控訴人に伝えた事実はあるか?あるならば、それはいつか?

ウ 本件学校が免除申請(甲 2)を不受理としたのであるならば、なぜ▲▲元教頭は「認められない。マスクを着用するように。」と言わず、「身体的な理由で、(中略)分かりました。分かったので、違う感染対策をして頂いて」(甲 4)と発言したのか?

エ 同様に、本件学校が免除申請(甲 2)を不受理としたのであるならば、甲第 4 号証記載の▲▲元教頭の発言から、免除申請を不受理としたと解釈できる明快な論理的説明をお願いしたい。

オ 控訴人が選択したネックウォーマーによる代替手段を本件学校は認めていなかったのか?

カ 控訴人が選択した代替手段を本件学校が認めていなかったのならば、その旨を控訴人に伝えた事実はあるか?あるならば、それはいつか?

キ 本件命課の理由は、衛生管理マニュアル(乙 7)や県教委通知(乙 3)に沿った協力依頼に控訴人が「応じなかった」からであると、●●元校長は認識しているのか?

ク ●●元校長がそう認識しているのであれば、その旨を控訴人に伝えた事実はあるか?あるならば、それはいつか?

ケ 控訴人が選択したネックウォーマーによる代替手段が感染対策として不十分であることが原因で、控訴人から他者を感染させ問題を発生させた事実はあるか?あるならば、それはいつか?

コ ●●元校長が控訴人に対して、控訴人が選択した代替手段の問題点を控訴人に指摘した事実はあるか?あるならば、それはいつか?それはどんな内容であったか?

サ ●●元校長は控訴人と感染症対策について妥協点を探る意思はあったか?

(2) 同書第 2.3〔2 頁〕について

控訴理由書、第 1.3〔5 頁〕の内容で「その余は不知。」とあるが、令和 3 年8 月 23 日に■■元校長からマスク着用の職務命令が発令されてから、控訴人がマスク着用を拒否した事実はあるか?あるならば、それはいつか?

(3) 同書第 2.6〔3 頁〕について

控訴理由書、第 1.6〔3 頁〕の内容について、「第 1 段落は争う。」とあるが、令和 4 年 3 月 8 日に▲▲元教頭が控訴人に対して代替手段を選択して感染症対策を維持するよう指示してから、控訴人が本件学校に対してマスク類の着用を一切拒否することを表明した事実はあるか?あるならば、それはいつか?

(4) 同書第 2.9.(8)〔4 頁〕について

控訴理由書、第 1.9「以上より」〔8 頁〕以下の記述の内容を「全て否認し争う。」とあるが、以下の疑問がある。

ア 山形県は新型コロナウイルス感染症が確実に発生していると断言できないことを認め(甲 28)、山形県衛生研究所は新型コロナウイルスが存在することを前提にしていることを認めている(甲 16)状況、つまり、新型コロナウイルス感染症の存在自体が不確かで、検査陽性者の発症原因が病原体の感染によるものかどうか断言できない状況で、●●元校長はマスク着用が発症を予防するものとして確実に効果があると認識しているのか?

イ ●●元校長がそう認識しているのであれば、確実に感染症対策をしていても発症し検査陽性となる事実を踏まえて、マスク着用が発症を予防するものとして確実に効果があると断言できる客観的な根拠を示していただきたい。

(5) 同書第 2.10〔5 頁〕について

控訴理由書、第 1.10〔9 乃至 10 頁〕の内容を「否認し争う。」とあるが、以下の疑問がある。

ア 国や県及び学校の方針の問題点を指摘し、異議を唱えることは、憲法第19 条及び第 21 条で保障された国民の権利であることを被控訴人らは否認するか?

イ 本件命課は、控訴人が感染対策に従っている従っていないに関係なく、「従わない意向を示していた」ことが理由で発令されたのか?

ウ ●●元校長も県教委も本件命課の理由は、控訴人が県教委通知(乙3)通りに感染症対策ができないことであると認識しているのか?

(6) 同書第 2.13〔5 頁〕について

控訴理由書、第 1.13〔14 乃至 15 頁〕の内容について「(1) 乃至 (4) は否認し
争う。」とあるが、以下の疑問がある。

ア 文科省は衛生管理マニュアル(乙 7)の内容を教職員や児童生徒に義務付けていたと、被控訴人らは認識しているのか?

イ ●●元校長は控訴人が命令服従義務違反を犯していると認識しているのか?

ウ 控訴人が命令服従義務違反を犯していると●●元校長が認識しているのであれば、控訴人のどの行為が命令服従義務違反であるのか?

2 被控訴人準備書面 1 に関する疑問点

(1) 同書面第 1.1.(1). ウ〔1 頁〕について

控訴人準備書面 (1)、第 1.1.(3)〔2 頁〕の内容について「その余は不知乃至争う。」とあるが、●●元校長は命課理由②も本件命課の理由であると認識しているのか?つまり、命課理由①は表向きの理由で、県教委通知(乙 3)通りに感染症対策ができない控訴人を迷惑教員であるとして本件命課で以て排除したのか?

(2) 同書面第 1.1.(1). オ〔1 頁〕について

控訴人準備書面 (1)、第 1.1.(5)〔3 頁〕の内容について「その余は否認し争う。」とあるが、●●元校長は命課理由①は本件命課の理由ではないと考えているのか?

(3) 同書面第 1.1.(2). ア〔2 頁〕について

控訴人準備書面 (1)、第 1.2.(1)〔3 頁〕の内容について「その余は不知乃至争う。」とあるが、具体的にどの部分を争うと考えているのか?

(4) 同書面第 1.1.(3). イ〔2 頁〕について

控訴人準備書面 (1)、第 1.3.(1). ア〔4 頁〕の内容について「その余は否認し争う。」とあるが、山形県は新型コロナウイルス感染症が確実に発生していると断言できないことを認め(甲 28)、山形県衛生研究所は新型コロナウイルスが存在することを前提にしていることを認めている(甲 16)状況を踏まえて、本件命課発令当時に命課理由①の合理性や正当性を与えるような危機が存在したことを科学的且つ客観的な根拠及び事実に基づいて説明していただきたい。

(5) 同書面第 1.1.(3). ウ〔2 頁〕について

控訴人準備書面 (1)、第 1.3.(1). イ〔5 乃至 6 頁〕の内容について「否認し争う。」とあるが、以下の疑問がある。

ア ●●元校長及び被控訴人らは感染症予防は医療ではないという認識か?

イ ●●元校長及び被控訴人らは、控訴人には自身の健康を維持するために医療を選択する権利はないという認識か?

ウ ●●元校長及び被控訴人らは本件命課発令当時、国は国民に感染症対策を強制していたという認識か?

エ ●●元校長及び被控訴人らは感染症対策を推進する権限が、控訴人の医療を選択する権利よりも優先され、控訴人の医療を選択する権利は考慮されなくてもよいという認識か?もしそうだとしたら、何の法律を根拠にしているのか?

(6) 同書面第 1.1.(3). エ〔2 頁〕について

控訴人準備書面 (1)、第 1.3.(1). ウ〔6 頁〕の内容について「その余は不知乃至争う。」とあるが、以下の疑問がある。

ア 一般的に県教委通知(乙 3)通りに感染症対策ができない教員は迷惑教員であるという考え方は、山形県公式ホームページ(甲 34)の内容に矛盾していないと山形県は考えるか?

イ 一般的に県教委通知(乙 3)通りに感染症対策ができない教員は感染症対策上危険であり排除するのは致し方ない措置であるという考え方は、山形県公式ホームページ(甲 34)の内容に矛盾していないと山形県は考えるか?

(7) 同書面第 1.1.(3). オ及びカ〔2 頁〕について

控訴人準備書面 (1)、第 1.3.(1). エ及び第 1.3.(1). エ.(ア)乃至(ク)の内容について「争う。」とあるが、反論できる部分に根拠を示して反論していただきたい。

3 乙第 9 号証について

控訴人らが乙第 9 号証を提出してきたことに対して以下の疑問がある。

(1) 一般的な感染症に対する通説や国や県及び県教委が示す感染症対策に対して、科学的根拠を示して異議を申し立てたり、批判することは自己中心的で協調性に欠けると●●元校長や被控訴人らは考えるか?

(2) 歴史的事実や科学的知見から国や県及び県教委が示す感染症対策は自身の健康を維持する観点から問題があると判断し、自身の健康維持を目的に示された感染症対策を拒否することは自己中心的で協調性に欠けると●●元校長や被控訴人らは考えるか?

(3) 県教委通知(乙 3)通りに感染症対策ができない控訴人は迷惑教員であると●●元校長や被控訴人らは考えるか?

(4) 県教委通知(乙 3)通りに感染症対策ができない控訴人を●●元校長が本件命課によって排除したことは致し方ない措置であったと被控訴人らは考えるか?

(5) そもそも県教委通知(乙 3)は教職員に対して記載通りの感染症対策を義務付けているのか?

(6) 義務付けているのだとしたら、感染症対策を義務付ける法律が存在しない中で県教委通知(乙 3)で以って教職員に記載通りの感染症対策を義務付けることが合理的であるという客観的な根拠を示していただきたい。

(7) 義務付けていないのだとしたら、命課理由③を命課の理由であるとして本件命課を控訴人に命課したことの正当性について説明していただきたい。

以上