第1章 分離培養試験

4 細胞変性効果の原因

令和6年1月1日公開

ここでは細胞変性効果の原因、すなわち培養細胞が死滅する原因について議論する。

エンダース論文を読めば、細胞変性効果が起こる要因には、培養細胞の選択、血清の量があげられ、検体の接種はその要因には含まれないことが分かる。ここでは、ウイルス学の観点からではなく、細胞培養の観点から、培養細胞が死滅する原因について調べていきたい。

培養細胞が死滅する条件

次のサイト「Applied Biological Materials(APB)社 細胞培養 入門」には次のように書かれている。赤字は筆者によるものである。

細胞の増殖期には、誘導期、対数期、静止期、および死滅期の4期があります(29)。誘導期では、細胞数は増加せず、細胞は増殖に向けた準備をします(29)。対数期では、細胞は増殖を開始し、時間経過とともに増殖が加速します。静止期では、栄養分の欠乏と毒性の代謝廃棄物の存在により、増殖率はプラトーに達し、一定速度を保つようになります(29)。最後に、細胞が死滅期に達すると、栄養分の欠乏、pH条件の変化、および毒性廃棄物の蓄積により死滅していきます(29)

これによれば、培養細胞が死滅する条件は次の3つであることが分かる。

  1. 栄養分の欠乏
  2. pH条件の変化
  3. 毒性廃棄物の蓄積

細胞死の原因は一つではない

上記説明から分かるように、細胞変性効果が起こる要因は病原ウイルス以外にも多数存在することが分かる。分離培養試験中に培養細胞が細胞死したからと言って、原因が病原ウイルスであると断言できない。寧ろ、培養する前に検体を接種することで、原因が接種したことにあるという思い込ませることが、この手品のトリックである。

まとめ

細胞変性効果の原因について紹介した。培養細胞が細胞死に至る理由は一つではないことを確認した。したがって、本来ならば細胞変性効果が認められた場合、その原因を病原性ウイルス以外にも検討しなければならないが、ウイルス学者はそれをしない。それは手品の種明かしになるからである。

では、次節ではいよいよ「培養」という手品の種明かしをする。


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3 エンダース論文の真実
5 分離培養の対照実験
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