感染研記者会見

令和2年1月31日

第2部


目次

  1. 第1部
  2. 第2部
  3. 第3部

国立感染症研究所が新型コロナウイルスの分離に成功したことに関する記者会見の発言内容である。オリジナルはこのYahooニュース(2020/2/1)から引用した。


日本経済新聞:

日本経済新聞の【イケムラ 00:16:47】と申します。先ほどいただいたリリースのほうで、今後、細胞とウイルスの分与を行うという話があったかと思うんですけれども、これは具体的にいつごろから、今、決まってる範囲でどういった研究機関に分与されるということが決まっているかということと、あと、この細胞というのは、ウイルスが感染したものを共有するのか、それとも感染させる前の【**********00:17:15】というところの細胞を分与するということなのか、どっちなんでしょうか。


脇田:

基本的には細胞はウイルス感染をしていない細胞ですね。感染前の細胞を分与するという予定をしております。それとウイルスも同時に分与を開始したいと考えています。国内、国外の研究機関でこのウイルスを利用して研究をしていただければ、これを研究に役立てていただけるということですので、そこは分与を開始したいと考えています。


日本経済新聞:

どの時期からというのは決まっていますか。


脇田:

細胞のほうは【国立栄養基盤研 00:18:00】ですか、そちらの細胞バンクがございますので、そちらに委託をしまして分与を開始するということになりますので、そちらの準備ができ次第、お願いをするということを考えています。

一方でウイルスのほうは、国内で分与のご希望があれば、このウイルスをちゃんと扱える施設であるということを確認して、それで分与をいたします。それから国外のウイルスの分与に関しましては、WHO、あるいはそのほかのウイルスを共有するような枠組みというのがありますので、そちらのほうに委託をして分与をしたいというふうに考えています。といいますのは、国外へ分与する場合も、さまざまな機関から希望があった場合に全てを1つ1つ対応するよりは、そういった枠組みを使うほうがより効率的であろうというふうに考えております。


日本経済新聞:

国内の分与の場合というのは、今、指定感染症として登録というか、指定されてますけれども、そういったことっていうのはウイルスを分与するっていうことに当たって特に障害であるとか、壁にはならないんですね。


脇田:

この病原体はまだ特定病原体にも指定はされていません。通常、SARSとかMERSと同様の取り扱いをしていくというふうに考えています。ですから分与、あるいは輸送に関して、それはもうきちんとルールにのっとってやっていくということになります。


日本経済新聞:

ありがとうございます。


時事通信:

時事通信社の【***00:19:37】と申します。遺伝子の変異の部分なんですけれども、感染力と病原性に関わる遺伝子がここであろうというのはだいたい推定はされていて、そこは変化してないという理解でよろしいでしょうか。


脇田:

はい、そういったところには今のところ変異があるということではないと思います。さらに、このウイルスをこれから解析をしていきますので、どの遺伝子が変化すると病原性が変化するかということも、培養細胞あるいは動物を使った実験、研究によって明らかになるということが期待されると思います。


時事通信:

感染力。


脇田:

感染力についても同じですね。


時事通信:

ただ、すでに知見がある程度あるということなんですよね。


脇田:

これまでSARS、MERSの知見がありますので、それをもとにして考えていくということで、それほど違いはないかなというふうに思います。それから、ウイルスがありますので、患者さんの、例えば中和抗体を、感染力に対抗するような免疫が付いたというようなこともウイルスを使って調べていくことはできるということになろうかと思います。


時事通信:

ウイルスを分与するときの【***00:20:49】ですけど、感染した細胞そのものを分与ということになるんでしょうか。


脇田:

今のところ考えているのは、分離したウイルスを分与するということで、感染した細胞をそのままお渡しするということではないというふうに思っています。


時事通信:

分与先は企業でも研究機関でも、しっかりした施設であれば。


脇田:

はい、きちんとした手続きができれば、そういったところには分与したいと考えています。


時事通信:

生かし方なんですけど、迅速診断だとかワクチンだとか、幾つかおっしゃいましたけど、感染研自体がやるおつもりなのはどれなんでしょうか。


脇田:

まずは診断系の開発ですね。それから病原性の開発。それからもちろん抗ウイルス薬の開発、それからワクチンということで、ほとんど全てのことを感染研としては進めていきたいということになります。もちろん共同研究先の大学とか、それから何かそういった診断薬とか治療薬とかワクチンとか、そのもとになるようなものができてくれば、それはもちろん企業さんのほうでそれを利用して、その先、開発を進めていただくということがわれわれ国立研究所の役割かなというふうに考えています。


時事通信:

病原性は【カイ****00:22:10】研究ですね。


脇田:

そうです、病原性の解析と研究ですね。やっぱり病原性というのは、このコロナウイルスが感染をして、どのような仕組みで病気を起こすのかということを知ることが非常に病気の仕組みを知る上で重要ですので、そちらはもちろんわれわれ研究機関として進めていくということですね。


NHK:

NHKの【ミズノ 00:22:38】と申します。このウイルスが分離される前までの状況について1点、伺いたいんですけれども、現在行われているリアルタイムPCRなどのプライマーなどあると思うんですが、これは最初に中国から提供されていたゲノムの情報に基づいてやっていたということなんでしょうか。


脇田:

そのとおりです。ですからこのウイルスを使いまして、そのプライマーセットが実際にどのように働くかということももちろん検証ができるということになります。


NHK:

こちらに示していただいている写真に関してなんですけれども、抗体を発現させてる緑色の部分なんですが、これはVero細胞に感染している写真ということでよろしいでしょうか。


脇田:

ここにお示ししているVeroE6/TMPRSS2細胞にウイルスを感染させまして、さらに患者さんの血清を当てている、反応させているということになります。さらにその抗体に蛍光が付いた2次抗体を反応させて、感染してる細胞が緑色に染まっているということがこの次の写真で見ていただけると思います。これですね。この緑色に光っているところが感染してる細胞が検出できてるというものになりますので、抗原抗体反応がきちんと起きてるということが分かりますので、先ほどの迅速診断キット等にもきちんと応用できることが、この写真からも分かるということだと思います。


じほう:

医療の専門書を出してます、じほうの【トミタ 00:24:24】と申します。素人的な素朴な質問で申し訳ないんですけど、これまでSARSとかMERSとかアウトブレークがあって、SARSなんかはアウトブレークが2000年代の前半で、もう十数年前という話になるんですけど、両方ともワクチンっていうのがいまだにないっていうふうに聞いているんですけれども、コロナウイルスのワクチンっていうのは開発が難しいとしたら、それがなぜなのか。今回、ワクチンの開発も進めるということですけど、この新型のコロナについては、そのめどというのはどうなのかということを教えていただいてもよろしいですか。


脇田:

ワクチン開発というのは通常、やはり年単位で掛かるものですから、なかなかすぐにこれ、ウイルスを分離したので半年以内にできるとかということはなかなか申し上げにくいといことになります。やはりコロナウイルスのワクチンが、これまでSARS、MERSで開発されてこなかったということは、このウイルス特有のワクチン開発の難しさというものがあると思います。

ただ、もちろんさまざまな手法によって、不活化ワクチンであるとか、それから弱毒生ワクチン、それからリコンビナントのタンパクを使ったワクチン、それからウイルスベクターを使ったようなワクチン、さまざまな手法がありますので、そういったものを総合的に試して、ワクチンの開発につなげられればいいというふうに考えています。

SARSの場合ですと、やはりアウトブレークが半年程度で収まったと。その後、患者さんも出ていないというところでワクチンの開発というのが、難しいという面もあるかもしれませんけど、その先にあまり進んでいないということはあるかもしれません。


じほう:

抗ウイルス薬の開発の見通しについて教えてください。


脇田:

抗ウイルス薬に関しましては、もちろんさまざまなウイルスで現在、抗ウイルス薬が開発されて使われています。ヘルペスウイルスであるとかインフルエンザウイルスであるとか、それから肝炎のウイルスに対する抗ウイルス薬が開発されて、現実に臨床の場で使われて利用されているわけですね。ですからこのコロナウイルスに対しても抗ウイルス薬が開発されれば臨床で使うことが期待されるわけです。

実際に感染者のウイルスが採れましたので、この感染細胞というものを用いて、感染してる細胞にさまざまな化合物とか、候補になるような薬を掛けて、そのウイルスの複製とか感染を止めることができるかどうかということを、スクリーニングといいますけども、スクリーニングをやって候補薬を探しているという過程になります。

もし、これまですでに既存の承認薬、そういったものの、既存の承認薬のライブラリーもありますから、それでこのコロナウイルスの増殖を抑えるようなものが取れてくれば、これは開発は非常に早くいくことが期待されます。ただ、やはりそういうものが効かなくて、新たな化合物から開発をしていくということになると、やはり年単位の開発の時間が掛かるということは予想されます。


時事通信:

既存薬が効きそうだということになればどれぐらいの期間。


脇田:

そこは、既存薬が本当にそのもので効くのか、それともその既存薬からさらにそこの開発をしていく、似たような化合物をさらに探していくのかということによって変わってくるだろうと思います。本当に既存の承認薬が効くということであれば、そこからもうすぐに臨床試験等ができるという形になりますけども、通常はなかなかそれほどうまくはいかないので、そこから候補薬を、化合物でやるか、展開していくということで、類似化合物をどんどん探していくわけですけども、その中からより効果の高いものを探していくということになりますので、そこから先はかなり、新たな化合物を探していくよりは早いですけども、ある程度の期間が必要になってくると思います。よろしいでしょうか。


記者1:

今回のコロナウイルスの新型肺炎全体に関わる話なんですけども、安倍首相が湖北省に滞在歴のある外国人の入国を当分の間、拒否するというふうに発表したんですけど、このことについて医学的な妥当性など、もしお話を伺えるのであればしていただけますでしょうか。


脇田:

湖北省からの日本への渡航を。


記者1:

湖北省に滞在歴のある外国人の入国を拒否する。


脇田:

それの医学的な妥当性ですか。


記者1:

そうです。


鈴木:

感染症疫学センターの鈴木と申しますけれども、ちょっとその発言そのものに関して私どもが今、承知しておりませんので、ちょっとコメントをすることができません。申し訳ありません。


記者1:

分かりました。もし確認されたらコメントってもらうことはできますか。


鈴木:

いずれにしましても、政治的な判断をされているのかもしれませんし、それに関して、もちろん必要であればコメントはできると思いますけれども。必要であればコメントはさせていただきたいと思います。いずれにしましても、ちょっと今、お話があった件に関しまして承知していませんので、なんとも申し上げられません。


記者1:

ありがとうございます。