感染研記者会見

令和2年1月31日

第3部


目次

  1. 第1部
  2. 第2部
  3. 第3部

国立感染症研究所が新型コロナウイルスの分離に成功したことに関する記者会見の発言内容である。オリジナルはこのYahooニュース(2020/2/1)から引用した。


記者2:

すいません、ちょっと細かい話なんですけど、ウイルスを分離したといったときに、細胞を増殖したものからウイルスだけを取り出したというような理解でいいでしょうか。


脇田:

今、見ているウイルス粒子というのは、ウイルスが培養細胞の中から自分でもう飛び出てきて、液体で培養してるんですけども、その液体を観察してるということになるんですね。それで、そのウイルスだけを純粋なものにしていくというのは、それはまたさまざまな手法をもって、より純粋なものにしていくということをするということになります。ですから今、ウイルスだけを採ってきてるということではないということです。


記者2:

あくまでも細胞の中で増えてるものを。


脇田:

そうなんです。細胞の中で増えてきてる、それからウイルスというのは細胞の中から外へ出てきますので、それを見ていくということになります。


記者2:

じゃあ外に出てきたものも見つつ、今、見てる。


脇田:

はい、そうですね。今、これはウイルスを見ている、電子顕微鏡で見ている、このウイルスは細胞の外に出てきたものを見てます。さらに細胞を電子顕微鏡で見ていきますと、細胞の中のウイルスも見えてくるというふうに思います。


記者2:

分離っていったときに、細胞の中で増殖しているものが増えてきている、これは分離っていうんですか。


脇田:

そうですね、これはウイルス学的な用語ですね。患者さんの検体とか、あるいは動物の検体でも、ウイルスに感染していると考えられている、そういった材料を用いて、それを培養細胞で増やしていくという作業が分離というふうにいっています。


記者2:

それで、配布するときは、これは細胞ごと配布することになるんですよね。


脇田:

先ほど申し上げたように、通常は、細胞の外に出てきますので、その細胞の外に出てきた、つまり液体の中に入ってるウイルスを分与するという形になることが多いです。感染細胞を分与することももちろん可能ですけど、そういった場合は特殊な目的ということになります。


記者2:

それは1つの【***********00:33:08】、何ミリリットルですとか。


脇田:

これはそれほど多い量は必要なくて、ウイルスと、それからそのウイルスに感染する感受性のある細胞があれば、こういったウイルスを研究するような研究所であれば、それは自分でそこの細胞に感染をさせて、また増やすことができるということになります。ですからあまりたくさんを分与するということは必要がない。


記者2:

ごく微量でいいんですか。


脇田:

ええ、ごく微量で大丈夫です。


記者2:

それは今後のワクチンと、迅速検査キットの開発なんですけど、これは先ほどの質問とかぶるかもしれないんですけども、感染研だけでやるのか、それともどこか共同でやるのか。


脇田:

当然、感染研は研究機関ですので、そういったキットの開発の途中まではやりますけども、それがきちんと病院で使われるようにするとかいうことは企業の力を借りないとできないわけですね。それから、大学等でノウハウをさまざま持っていらっしゃるところもあるので、そういったところの協力も得ながら開発は進めるということだと思います。


記者2:

【知見が********00:34:29】。


脇田:

知見ですか。


記者2:

知見です。


脇田:

地方衛生研究所もさまざまな知見を持っていらっしゃるところがありますので、そういうところを協力をして進めたいと思います。もちろん先ほど言いましたように、病院で使っていただいたり、それから地方衛生研究所で使っていただくということになりますので、そういったところは協力していただくということになります。


記者2:

ワクチンとか治療薬についても同じですか。


脇田:

そうですね、そういうことになると思います。


テレビ朝日:

テレビ朝日なんですけども、具体的に後ろの画像を指し示してもらって、これがこれですというような感じでちょっとやっていただけないでしょうか。


脇田:

はい。じゃあちょっと解説をさせていただきます。まずは電子顕微鏡の写真ですね。


テレビ朝日:

もうちょっとスライドに近づいていただけるとありがたいです。


脇田:

ちょっと止めますか。今、スライドショーになっちゃってる。これでいいんでしたね。それを1個ずつ流していただくとして。これがウイルス粒子ですね。もうこれでいいです。このウイルスのその前の1個目の写真。これがウイルス粒子の写真。これがウイルス粒子ですね。いわゆるコロナウイルスといいますけども、このウイルス粒子の表面にある突起、これスパイクタンパクといいますけども、このスパイクが、いわゆる王冠状、クラウン状になるということからコロナウイルスというふうに呼ばれています。ここに【エンベ 00:36:20】がありますけども、その内部構造が見えてるということになります。

じゃあ次をお願いします。これは感染した細胞を見ています。真ん中にありますのが、これが多核巨細胞というもので、通常はここら辺の細胞を見ていただくと分かるんですけど、1個の細胞に核が1つということですけど、この大きな細胞は核がたくさんあります。これは感染した細胞が、膜が融合して1つになってしまうために、内部に核がたくさん出てくるということになります。ですからこういった現象が見られると、これはウイルスが感染したんだなということを、ウイルス学的には評価するということになります。では次をお願いします。

これは同じ培養細胞を使って、先ほど申し上げたように、患者さんの血清を反応させて、感染細胞を検出していると。ですからこれは抗原抗体反応というか、免疫学的な反応を使っています。こういう緑色の細胞、これが感染している細胞です。この青色に染まっているもの、これが細胞の核なんですね。核は青色に染めていて、緑色はウイルスが染まっているということですから、先ほど申し上げたように、ここのこの細胞、これは1つの細胞ですけど、核がたくさん見えています。ですから先ほど申し上げた、多核巨細胞にうつる、感染するということが観察できるということになります。

ですから、確かにウイルスの抗原に対して患者さんの血清が反応していますので、免疫反応が起きていますから、このウイルスを使って患者さんの抗体を反応させることができるということがここから分かりますから、抗原抗体反応の迅速診断キットを開発する基礎になるようなデータと考えています。


記者3:

ちょっと確認をさせてください。これで1つ、1回、ウイルスが分離できたわけですが、また別の検体、別の方の、患者さんの検体とかを使って、さらに新しくウイルスを分離したりされるんですか。


脇田:

それも今、試みておりまして、やはり1つの株だけではなくて、複数の種類のウイルス株を分離して、それで比較をするということはウイルス学的にはよくやることですし、今現在それも試みていると。もちろんあくまで今現在、検査になっている方々の検体からウイルスがきちんと検出されるかということを調べていく過程でそれを分離できるということになります。


記者3:

ちょっともう1点。先ほど鈴木先生、確認ができればコメントしていただけるというお話だったんですが、それは今晩、1時間後というか、30分後とか、2時間後とか、そういうことができますでしょうか。


鈴木:

いえ、その予定はありません。


記者3:

分かりました。


日本経済新聞:

日経新聞です。分離されて、あらためて観察されたことで、もちろん今まで理屈で考えることっていろいろあるとは思うんですけれども、見てあらためて認識されたこととか、分かったとことか、【*******00:39:49】ありましたら。


脇田:

もちろんこれを分離したのが、現在、ウイルス第三部にいる研究チームで、竹田誠部長と松山州徳室長のグループですから、彼らはさまざまな感想を持っていると思うんですね。私としては、やはり実際にコロナウイルスが分離されて、遺伝子配列もそれほど変異が入ってる状態ではないということですので、あらためてこのウイルスが分離されて、このウイルスを使って研究開発が進められるんだということは実感をしていますので、これはこのウイルスを使うことによって研究を進めて、今後の新型コロナウイルス感染の対策により役立つような仕事を、これから感染研としてはやっていきたいというふうに考えています。


日本経済新聞:

先ほど形状のこととか【*******00:40:48】ございましたけれども、ほかにもっと特徴があれば1つ2つ、教えていただきたいんですけども。


脇田:

はい。ご覧になって分かると思うんですけど、このウイルスですね。もう1回、止めてもらって。よくご覧になると、ウイルスって本当に丸い形をしてるものと、それからあまり決まった形をしてないようなウイルスがあるんですね。コロナウイルスはやはり特徴的なのは、あまりきれいな丸ではなくて、少しいびつな形をしているような特徴があります。ほかのウイルスだと中にキャプシド構造っていうのが見えたりすることがあるんですけど、これはキャプシド自体は、キャプシドタンパクがゲノムに巻き付いてるような形を取ってますので、そういった意味で、よく正二十面体の内部構造では出てくるという場合はもうキャプシド構造なんですけど、これはそういったものが見えないという、本当にコロナウイルスに典型的な形をしてるということですかね。


日本経済新聞:

その形っていうのは感染の仕方に【****00:41:54】あるんですか。


脇田:

それはそれぞれのウイルスの特徴なので、必ずしも感染の仕方にそれが本当に結び付いていくかということは、今、それがつながるようなエビデンスはないと思います。


記者4:

すいません、さっきので、きれいな丸でないっていうのは、コロナウイルス全般がそうなんですか。


脇田:

そうです。


記者4:

ありがとうございます。


脇田:

よろしいでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。これにて終了させていただきます。