令和6年12月21日作成
原題:「Ultrastructural Characterization of SARS Coronavirus」(HTML)
邦題:「SARSコロナウイルスの超微細構造解析」
著者:Cynthia S. Goldsmith, Kathleen M. Tatti, Thomas G. Ksiazek, Pierre E. Rollin, James A. Comer, William W. Lee, Paul A. Rota, Bettina Bankamp, William J. Bellini, Sherif R.
Zaki
掲載年:2004年2月
掲載誌:Articles from Emerging Infectious Diseases
概要
重症急性呼吸器症候群(SARS)は、2002年から2003年にかけて重症肺炎が世界的に発生した際に初めて報告された。この重症肺炎は、人の死亡と人から人への感染に関連していた。病因(etiologic agent)は、分離(isolate)されたウイルスの薄切片電子顕微鏡検査により、ひとまずコロナウイルスと同定された。ビリオン(ウイルス粒子)は球形で、平均直径78 nmであり、表面に突起のあるエンベロープ内にらせん状のヌクレオキャプシドから構成されていた。ここでは、SARSに関連するコロナウイルスに感染すると、紛れもない超微細構造が生じることを示す:二重膜小胞、ヌクレオカプシド封入体、そして細胞質の大きな粒状領域である。これら3つの構造とコロナウイルス粒子は、超微細構造免疫金染色法およびin situハイブリダイゼーション法により、ウイルス蛋白およびRNAが陽性であることが示された。さらに、SARS患者の気管支洗浄検体の超微細構造検査では、多数のコロナウイルスによる感染細胞が認められた。これらの感染細胞は、感染した培養細胞と同様の特徴を有していた。 電子顕微鏡による研究は、SARS集団発生の病因(etiologic agent)を同定する上で、またその後の実験室および疫学的調査の指針を得る上で極めて重要であった。
(中略)
これらの超微細構造の所見の多くは、SARS患者のBAL検体でも観察された(図5B)(6)。小胞内や細胞表面を覆う特徴的なビリオン(ウイルス粒子)と二重膜小胞の存在は、コロナウイルスが感染していることの明らかな証拠であり、ウイルスの複製が感染の初期に下気道で起こっていることを示唆 している。BAL検体のEM検査は、SARS-CoVの診断において有用なツールであることが証明されるかもしれない。このSARS-CoVの診断は、インフルエンザの感染を診断するためのBAL検体の使用とよく似ている。最近の研究では、SARS患者や実験的に感染させたマカクザルの肺組織や消化器組織からコロナウイルス粒子が検出されたことが報告されている(7,30-33)が、これらの構造のウイルスの性質はIEMや超微細ISHアッセイでは確認されていない。コロナウイルス粒子は、被覆小胞、多胞体、ペリクロマチン顆粒、糖鎖小体、細胞突起など、細胞内で日常的に見られる他の非ウイルスの構造と形態学的に混同されることがある(29)。したがって、臨床検体を検査する際には慎重なアプローチが望まれる。
(中略)
参考文献